2024年、F1の収益は前年比14%増の36.5億ドルという過去最高を記録しました。メディア放映権料の上昇、スポンサー収入の増加、レース開催数の拡大がこの成長を後押ししています。
アナリストは、F1チームへのスポンサー出資が今後も急増すると予測しており、今年のスポンサー総額は29億ドル(前年比10%増)に達する可能性があります。仮想通貨、ソフトウェア、オンラインベッティング業界など、新規スポンサーの参入がその一因です。
本記事では、なぜ企業が世界で最も高額なスポーツの一つに投資するのか、その背景と投資の実態を紐解きます。
企業がF1に注目する理由
グローバルファン層の拡大
F1は現在、世界中で7億5,000万人以上のファンを抱えており、若年層や女性ファンの増加が顕著です。かつては閉鎖的だったこのスポーツも、今では世界中で注目され、レース内外のドラマが話題を呼んでいます。
ドライバーやチームはSNS上で爆発的に人気を集めており、可視性がかつてないほど高まっています。中東諸国、特に産油国はF1の地域拡大に資金を投じており、サウジアラビアでは女性ファンの関心が11%上昇するなど、文化的な壁を越えて新たな市場を開拓しています。
自動車産業との親和性
2026年からF1は新たなエンジンレギュレーションを導入し、サステナビリティと電動化に重点を置きます。自動車メーカーにとっては、自社技術を誇示し、市場での優位性を確保する好機です。
アウディはサウバーを100%買収し、F1への本格復帰を果たします。トヨタも、ハースF1との技術提携を通じて再参入。フェラーリ製パワーユニットを使いながら設計・製造面で支援を行います。
独自で成長中の巨大市場へのアクセス
F1は20カ国以上でレースを開催し、180カ国以上で放映されています。そのブランド力は高まり続け、エミレーツ航空やカタール航空、Oracle、AWS、ロレックス、トミー・ヒルフィガーなど、様々な業界の大手企業がスポンサーに名を連ねています。
近年では、オンラインカジノやベッティング企業も参入しており、レース観戦と連動したプロモーションが展開されています。
また、Netflixの人気シリーズ『Drive to Survive』の影響も大きく、F1に関心のなかった層も毎年のようにこのドラマに引き込まれています。これが「Netflix効果」であり、企業にとってはメディア露出の有効性を示す実例でもあります。
注目のチームスポンサーシップ
- Oracle × レッドブル・レーシング
年間1億ドル規模の契約で、クラウドコンピューティングによるレース戦略支援が含まれます。
- HP × フェラーリ
年間約1億ドルで、HPの技術がチームの運営全体に統合され、パフォーマンス向上に貢献。
- Petronas × メルセデス
年間約7,000万ドルのパートナーシップで、燃料・潤滑油の技術開発を担当。
- Aramco × アストンマーティン
年間7,500万ドル相当の契約で、F1全体の持続可能性戦略にも関与。
- Stake × ステークF1チーム(旧アルファロメオ)
暗号ベッティング企業Stakeが年間5,000万ドルを投資。Audiが2026年に参入するまでスポンサー契約継続。
グローバルブランドとの連携
- LVMH
TAG Heuer、ルイ・ヴィトン、モエ・ヘネシーなどのブランドが、10年・10億ドル超の大型契約でF1と提携。
- American Express
アメリカでF1公式決済パートナーとなり、カード会員向けの特典を展開。新しいファン層へのアプローチを強化。
- マクドナルド(ラテンアメリカ)
地域限定でパートナーシップを結び、看板広告や店舗プロモーションを活用。
- Atlassian × ウィリアムズ・レーシング
豪ソフトウェア企業アトラシアンがAI・データ分析でチーム力強化を図る技術提携。
世界中でF1の人気が拡大する中、企業がこのスポーツへの注目を高めているのは明白です。今後この流れがF1の構造や企業戦略にどのような変化をもたらすのか、さらなる注目が集まります。